月別アーカイブ: 2025年7月

サカモト石油のよもやま話~道のり~

皆さんこんにちは!

サカモト石油の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~道のり~

ということで、「原油からガソリンになるまで」の流れを、段階ごとにわかりやすく、かつ深く解説します。

 

私たちが何気なく使っているガソリンは、ガソリンスタンドで給油すればすぐ手に入ります。しかし、その一滴ができるまでには、数百万年という地質の歴史と、複雑な工業的プロセスが存在します。







原油の起源 〜太古の命のエネルギー〜


● 化石燃料としての原油


ガソリンのもとになるのは原油(crude oil)です。原油は、数千万〜数億年前の動植物の死骸が、海底などの無酸素環境で堆積し、長い年月と地圧・地熱によって分解・変質して生成されたものです。



● 油田の形成


これらの原油は、地層の隙間に溜まり、「油田」として地中に存在しています。掘削技術の進歩により、深海やシェール層などからも採取できるようになってきました。







採掘と輸送 〜地中から地上へ〜


● 掘削(ドリリング)


専門の装置で地中を数百〜数千メートル掘削し、パイプラインを通じて原油を地上に汲み上げます。これには地質調査やシミュレーションなど、高度な技術が必要です。



● 一次処理と輸送


採掘されたばかりの原油は、砂・水分・ガスなどを含んでいるため、油水分離装置や脱ガス装置によって一次処理されます。
その後、タンカー船・鉄道・パイプラインを通じて、各地の製油所へと運ばれます。







精製 〜原油がガソリンに生まれ変わる〜


原油はそのままでは使えません。さまざまな炭化水素の混合物であるため、「分ける・加工する・仕上げる」というプロセスを経て、ガソリンを取り出す必要があります。



● 1. 蒸留(常圧蒸留塔)


製油所で行われる最初の工程が蒸留(ディスティレーション)です。原油を約350~400℃に加熱し、沸点の違いを利用して成分を分離します。





  • 沸点の低い順に





    • 石油ガス(プロパン・ブタン)




    • ガソリン(約30〜180℃)




    • 灯油




    • 軽油




    • 重油






この段階で取り出されるガソリンは「直留ガソリン」と呼ばれますが、量は限られており、品質も不十分です。



● 2. 分解(クラッキング)


需要が高いガソリンを増やすために、重油などを高温・高圧・触媒反応で分解(クラッキング)し、ガソリン成分を生成します。





  • 熱分解(サーマルクラッキング)




  • 接触分解(FCC=Fluid Catalytic Cracking)
    などの技術が使われます。




● 3. 改質・ブレンド


次に、オクタン価(燃えやすさ・ノッキングの起きにくさ)を上げるために改質(リフォーミング)が行われます。
さらに、安全性や排ガス規制を考慮して、複数の成分を混ぜ合わせ(ブレンド)て、最終的なガソリン製品が完成します。







流通と販売 〜製油所から車へ〜


精製されたガソリンは、タンクローリーやパイプラインで各地の油槽所(貯蔵施設)へ輸送され、そこからガソリンスタンドに配送されます。



● ガソリンスタンドでの品質管理


スタンドでは、定期的な検査・水分管理・静電気防止などの安全対策が行われ、私たちが安心して使える品質が保たれています。







一滴のガソリンに込められた科学と時間


ガソリンは、
✅ 数千万年にわたる自然の営み
✅ 高度な採掘・精製・分配技術
✅ 安全かつ効率的な物流と管理
という多くの要素が積み重なって初めて私たちの手に届くエネルギー資源です。


私たちが車に給油するその瞬間にも、壮大な地球の歴史と最先端の科学がつながっているのです。


 

サカモト石油のよもやま話~ルーツ~

皆さんこんにちは!

サカモト石油の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~ルーツ~

ということで、 世界初のガソリンスタンドの誕生と、その歴史的背景・意義について詳しく解説します。

 

現代のモータリゼーション社会に欠かせない存在、ガソリンスタンド(サービスステーション)。ドライバーにとっては日常の一部であり、エネルギーインフラの中核でもありますが、いったいこの「スタンド」はいつ・どこで始まったのでしょうか?

  1. 自動車とともに生まれた「ガソリンを売る場所」



  • ガソリンの販売はもともと薬局から


20世紀初頭、自動車はまだごく一部の富裕層の乗り物でした。当初はガソリンを手に入れる手段が限られており、薬局や雑貨店で缶詰のような形で購入するのが一般的でした。

この「非効率で危険」な販売方法に代わる、新たな給油手段が求められ始めていたのです。





  1. 世界初の“本格的”ガソリンスタンド誕生



  • 1913年 アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ


世界で最初の近代的なガソリンスタンドは、1913年12月1日、アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグにて、ガルフ・オイル社(Gulf Oil Corporation)によって開業されました。

このスタンドは単にガソリンを提供するだけでなく、以下のような革新的なサービスを導入しました

  • 地中タンクからの直接給油(安全性向上)

  • 自動車整備・オイル交換などのサービス

  • 給油係によるフルサービス対応

  • 時間営業、価格表示、清潔な施設の設置


この一歩が、後の“サービスステーション”という概念を確立する礎となります。





  1. ヨーロッパや日本における最初のガソリンスタンド



  • ヨーロッパ


ヨーロッパでの最初のガソリンスタンドは、ドイツのハンブルク(1920年代初頭)に誕生したものとされます。欧州では都市計画とともにスタンドの設置が進み、美観や安全性への配慮が重視された設計が特徴です。

  • 日本


日本における最初のガソリンスタンドは、1920年(大正9年)に東京・芝浦で開業したものが最初とされています。運営したのは「スタンダード・ヴァキューム石油会社(現・ENEOSの前身企業)」で、当時は人力ポンプでガソリンを汲み上げ、バケツで注ぐ形式でした。





  1. ガソリンスタンド業の進化と影響


ガソリンスタンドは、単なる給油所から、以下のような多機能サービス拠点へと進化を遂げました

  • オイル・タイヤ交換などの軽整備

  • カーウォッシュ、車検代行、ETCセットアップなどの利便サービス

  • コンビニ併設型(コーヒー・食品の販売)

  • EV対応・水素ステーションなど、次世代エネルギー対応


また、地方では地域コミュニティのハブとして機能し、高齢者の見守りや防災拠点としての役割も担っています。





  1. 歴史の意義と現代への教訓


1913年にアメリカで誕生したガソリンスタンドは、それまで「どこで燃料を買えばいいのか」という課題を解決し、自動車社会の本格的発展を支えるインフラとして機能しました。

現代もまた、EV(電気自動車)や水素燃料車の普及を背景に、“エネルギー供給拠点”としての役割を再定義する転換期にあります。




最初のスタンドが切り開いた「移動の自由」

ガソリンスタンドは、ただの燃料補給場所ではありません。1913年のピッツバーグでの第一歩が、自動車社会を支えるインフラを形づくり、現代の私たちの移動の自由と経済活動の拡大に大きく寄与したのです。

今後、カーボンニュートラル社会に向けて、ガソリンスタンド業は再び進化を求められています。その未来像を描くためにも、私たちはまず、その「最初の一歩」を知っておく必要があるのではないでしょうか。